頭上にいるもの

写真怪談

昼穴(ひるあな)の雪

雪の午後、ほんの数分だけ雲が裂けて太陽がのぞいた――その“白”を見た人から、午後が削れていく。
写真怪談

頭上のループ

夕焼けの高架下、音の消えた抜け道で“頭上”がゆっくりと呼吸を始める――。
写真怪談

スピードをおとす勇気

首都高の腹の下、低い天井に押し潰されるような歩道橋で――「スピードをおとす勇気が身を守る」の文字だけが、やけに生々しく迫ってくる夜がある。
写真怪談

電線の網にぶら下がる夕方

夕方の路地で見上げた電線は、いつから「網」になったのだろう──青い点滅が始まってから、帰り道が終わらなくなった。
写真怪談

吊り上げられるターミナル

再開発のクレーンが“何も吊らない”はずの線で、通勤客の影だけを釣り上げていく――都心のターミナル駅で起きた、記録にも残らない欠落の話。
写真怪談

車道はここまで

吹雪の道で頼りになるはずの「下向き矢印」が、その日だけ“別の境界”を作りはじめる。
写真怪談

剪定後の空巣

撤去されたはずの烏の巣は、なくなったのではなく――「空」に移っただけだった。
写真怪談

鳴かないカラスの名簿

高架駅の入口へ続く陸橋、電線に止まる鳴かないカラスを見つけた夕方——先頭車の窓に貼りついた人影が、こちらを“数える”ように見返してきた。
写真怪談

山門の真ん中を歩くな

秋になると、誰も寺の山門の真ん中をくぐらない――分厚い銀杏の落ち葉の布団の下には、今もひとり分の重さが眠っているからだという。
写真怪談

空の結び目にいる人

昼の青空に伸びる電線とクレーンの交差点――その「空の結び目」に、いつの間にか一本増えている紐と、見上げた者だけが気づく“ぶら下がっている誰か”の話です。
写真怪談

頭上に残された一段

空で終わる階段の“最後の一段”が、頭の上に降りてくる。足音は一度だけ——そして、何かを忘れる。
写真怪談

逆さの歩幅

高架下の斜路で、私の足音はいつも一拍遅れて“頭上”を横切る。見上げた継ぎ目の向こうに、逆さの道路が通っていた。
写真怪談

風の名簿

墓地の棕櫚は、風が吹くたびに“名簿”をめくる。呼び出し音のない着信は、今晩、誰に届くのか——。
写真怪談

青天に刺さった機影

渋谷の空に、針の先のような機影が“止まった”。動かすたびに何かが抜け落ちる――あなたの街で起きる、静かな消失の話。
ウラシリ怪談

空に溶ける声

オゾン層が回復し、空がかつてないほど澄んで見えるようになった頃のことです。ある町では、日中にふと立ち止まると、空から誰かの話し声が聞こえると噂されました。最初は風の音と混じったような囁きでした。しかし空が青く深まるほどに、その声は増えていきました。遠くの市場での会話、名も知らぬ家族の笑い声、そして誰も覚えていない歌が響くこともあったそうです。人々はそれを喜びました。「空気がきれいになって、音もよく通るのだろう」と言って。しかし、やがて異変に気づきます。夜になっても、空から声が降り注いだのです。窓を閉めても、耳を塞いでも、声は止みませんでした。誰かの名前を呼ぶ声が混じるようになり、朝には自分自身の声が空に溶けて響いていたといいます。最後には、その声を聞いた人の一部が、誰とも話さなくなりました。いや、話せなくなったのかもしれません……空の声に溶け、言葉が持ち去られたように。記録はそこで途絶えています。この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。オゾン層、2066年までに完全復旧する見込...
写真怪談

鉄塔に棲むもの

その鉄塔は、町外れの空き地に屹立していた。夕暮れになると、真っ黒な影となって空を切り裂き、風が吹くたびに高圧線が低く唸る。──あそこには「誰か」がいる。昔から子どもたちの間ではそう囁かれていた。ある若い作業員が、夜間点検のために鉄塔に登ったという。仲間に無線で「今から昇る」と告げ、ゆっくりと階段を上がっていった。だが数分後、彼の声は奇妙に変わった。「……うしろに……」無線が途切れ、雑音だけが流れた。すぐに捜索が始まったが、鉄塔の上にも、下にも、彼の姿はなかった。制服も、ヘルメットも、何ひとつ残されていなかった。それからだ。夜になると、この鉄塔から「降りられない足音」が聞こえるようになった。金属の階段を踏む硬い音が、ずっと、ずっと、同じ段を上下するように続くのだ。誰が聞いても、登りきることも、降りきることもない。ある晩、好奇心からそれを確かめに行った男がいた。彼は真下で耳を澄ませ、確かに金属音を聞いたという。しかし──音が近づいてくるのに、姿はなかった。見上げれば、鉄骨の間から覗き込む「影」があった。真っ黒な...
写真怪談

電線にぶら下がるもの

夕暮れの雲が低く垂れこめ、電線の黒い線が空を裂いていた。その下を歩いていた二人の通行人は、ふと立ち止まった。風もないのに、頭上の一本の電線だけが震えていたからだ。その揺れは徐々に大きくなり、やがて異様な音が混じった。——声だ。それも、電線の内部から漏れてくるような、低く途切れ途切れの囁き。言葉は判別できない。だが、聞いていると自分の名前を呼ばれている気がしたと証言している。次の瞬間、雲の切れ間に光が差した。その光の中で、電線に何かがぶら下がっているのが見えた。四肢が異様に長く、関節が逆方向に曲がった、人間のような影。その顔は、雲と同じ色で輪郭が曖昧だった。そいつは頭を下にして揺れ、見上げた二人をまっすぐ見下ろしていたという。光が雲に飲まれると同時に、影も声も消えた。だが、その後数日間、その電線の下を通った人々が次々と原因不明の耳鳴りを訴えた。全員が「金属を引き裂くような音に、自分の名前が混ざっていた」と語っている。この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。