階段

写真怪談

三時四十四分の左側通行

改札を出て外へ降りる階段で、時計が「三時四十四分」から動かなくなった。逃げる理由もないまま、ただ“普通に降りよう”としてしまった――。
写真怪談

安全第一の灯

夕方の晴れ空の下、封鎖された団地の入口だけが“夜”になっていた――「安全第一」の灯りが、帰る場所を決めてしまう前に。
写真怪談

余計な一人

オフィスの窓から見える非常階段には、いつも「一人余計な人」がいる──折り返しから降りきるところを、誰も見たことがないまま。
写真怪談

頭上に残された一段

空で終わる階段の“最後の一段”が、頭の上に降りてくる。足音は一度だけ——そして、何かを忘れる。
写真怪談

階段の番号

何度上っても、段数が合わない階段がある。
写真怪談

途切れぬ非常階段

女子大の裏にある非常階段は、夜になると時折「おかしな音」を立てるという。カン、カン、と靴の踵のような音が金属を叩く。だが見上げても誰もいない。ある学生が、深夜に研究室から戻る途中、その階段を見上げて凍りついた。最上段に立つ人影が、上の階へと上がっていく。だが、その建物は三階建てで、そこに「上の階」など存在しない。それでも影は、鉄柵の先にあるはずのない段を、踏みしめるように昇り続けていた。恐怖に駆られた学生は逃げ出したが、数日後、彼女は行方不明になった。残されたスマホには、最後に撮影した写真が残っていた。それは暗闇の非常階段を写した一枚。ただしその画像には、階段の上方に「もう一つの階層」が写り込んでおり、そこに背を向けて昇っていく女の姿が鮮明に残されていた。以来、非常階段の踊り場から夜空を見上げると、時折、存在しない「四階」「五階」へと続く階段が闇に浮かび上がるのだという。そこに足を踏み入れてしまった者は、二度と地上に戻らない。まるで、この世とあの世を繋ぐ階段のように。この怪談は、実際の写真から着想を得て構成...
写真怪談

螺旋の底に立つ影

階段を下りていると、奇妙な感覚に襲われた。まるで、降りても降りても同じ踊り場に戻ってきてしまうような、時間の輪の中を歩かされているような――。そのとき、窓ガラスに映るものに気づいた。自分の姿ではない。肩を落とし、顔を見せぬまま、ただじっと立ち尽くす黒い影。窓の外にいるはずのそれは、目を逸らすたびに、いつの間にか階段の踊り場へと移動していた。気づけば、下へ続く階段は影の先へと伸び、逃げ場を失った。影は何も語らない。ただこちらを待っている。「降りてこい」とでも言うかのように。誰かが一度、この階段で姿を消したのだろうか。もし降りたなら、自分もまた二度と上には戻れない気がして、足が固まった。そのまま踊り場に立ち尽くしていると、階下からかすかな足音だけが、こちらに近づいてきた。この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。
写真怪談

ガラスの外にいる

駅ビル地下の階段で、事故があったという話を聞いた。だが警備記録にも報道にも何も残っていない。ただ、監視カメラの記録だけが毎月更新されていない。なぜなら、その地点だけ、映像に異常が出るのだという。ガラス壁の向こうにいるはずの人物が、時折“中からこちらを見ている”。階段の下で人が動くと、ガラスの中の人影が数秒遅れて、まるで鏡像のように追いかけてくる。しかしその動きは一致しない。誰も登っていないのに、影だけが駆け上がってくることもある。あるカメラマンがその場所で撮った一枚に、妙なものが写った。階段を上がる姿がガラスに写っている。しかし、その位置に人影はいなかったという。構造的にも、反射角的にも、その像は存在し得なかった。その写真を持ち帰った編集者が、後日こう言った。「これさ、右足がね、接地してないんだよ。地面の上に“貼り付いてる”みたいに見える」その三日後、その編集者は意識不明で発見された。地下鉄構内のガラスに激突していたらしい。頭蓋骨が“内側から”割れていたと報告されたが、それ以上のことは何も分かっていない。い...