ウラシリ怪談 赤い月と逆さに動く国
赤い月が沈んだ翌夜、都の高層ビルに異界の囁きが差し込んだそうです。深夜、総理の辞任が発表されると、国中の時計が一斉に狂い始めたといいます。針はゆっくり逆回転し、時報は歪んだ共振を伴って廊下に響いたそうです。議場の窓ガラスに血のような朱が滲み、外の街灯が瞬いて消えました。闇の中、誰も居ないはずの記者席から赤黒い滴が落ち、広報台に影を残したといいます。翌朝、街を覆っていた硬貨のような静寂が破れ、円の価...
ウラシリ怪談
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