路地裏

写真怪談

排熱の下で息をするもの

雑居ビルの裏手。昼間はただの退屈な景色──自転車、カラーコーン、並んだ室外機。だが、この場所を深夜に通る人は少ない。なぜなら、室外機から出る温風が「規則的すぎる」からだ。ブォオオ、と吹き出す音と風の間隔が、どの機械もぴたりと揃っている。まる...
写真怪談

路地裏の声

夜の仕込みを終えた帰り道、店の裏口から路地に出ると、青いゴミ桶が三つ並んでいた。昼間は何の変哲もないはずのそれが、今夜は妙に膨らんでいる。袋越しに透ける中身は、新聞紙や生ごみの他に、布切れのようなものが見えた。足を止めた瞬間、奥のゴミ桶が、...
【ウラシリ】怪談

濡れた蓋

雑誌棚の最下段、色褪せた地方観光特集の一頁に、村の下水マンホールの写真が載っていたそうです。灰色の鉄蓋いっぱいに小さな生き物の絵が塗られ、観光客向けに全国へ広がっているといいます。ただ、その村のものは妙でした。人通りのない路地の中央に埋め込...
写真怪談

影を連れてくる看板

夜の住宅街の角に、それは立てかけられていました。木製の、笑顔を貼り付けた子供の形。路地の暗がりに溶けるような塗装で、目だけが白く抜けています。近くに住む人は言います。あの看板、昼間は必ず少し傾いているのに、日が暮れると真っ直ぐこちらを向くの...
写真怪談

裏路地に消える台車

昼下がりの飲食街。仕込みを終えた料理人二人が、台車を押して裏路地を歩いていた。白衣の背中に、午後の陽が滲む。ところが、その台車には何も載っていない。空のまま、軋むような音を立てて進んでいくのだ。「……なんか重くねぇか」片方がそう呟いた。もう...
写真怪談

壁の奥から来る女

商店街の裏路地、壁一面に描かれた西洋の街並みの絵。色褪せながらも遠近感が見事で、通りすがりの人は思わず足を止めてしまう。ある夜、飲み会帰りの私は、その壁の前でバイクを止め、タバコを吸っていた。煙越しに壁を見ると、絵の中の通りを白い服の女がこ...
写真怪談

水面の向こうから

雨上がりの夕暮れ、路地の角に大きな水たまりが残っていた。その水面には、白い道路標示と赤いポール、そして空を覆う木々の枝葉が鮮明に映っている。だが、ひとつだけおかしなものがあった。──標識の下に、人影が立っている。その影は、実際の道路には見当...