街角の異変

写真怪談

下から呼ぶ音

夜の帰り道、近道として公園を抜けるのが癖になっていた。人気のない舗道を街灯が照らし、雨上がりの空気がまだ湿っている。足元のマンホールが、光を鈍く反射していた。濡れた鉄の模様が、なぜか水の中のように揺れて見える。そのとき、「コン」と小さな音が...
【ウラシリ】怪談

選ばれた声

都心の夜は、いつもより静かでした。高層ビルの谷間を風が渡り、ネオンがわずかに揺れていたといいます。その晩のニュースでは、「ある女性議員が政権の新しい代表に選ばれた」と繰り返し報じられていました。画面の中の彼女は笑顔でしたが、声だけが微かに遅...
【ウラシリ】怪談

夕暮れの店頭

その商店街の一角に、無人の古着店がありました。扉の前にはマネキンが立ち、まるで店員のように客を迎える役をしていたそうです。昼間に訪れると、通り過ぎる人々は微笑ましく眺めるだけでした。しかし、夕暮れ時になると……橙色の光が長く影を伸ばし、マネ...
写真怪談

見返す目、街角の鳩

昼下がりの交差点。信号待ちをしていると、欄干に一羽の鳩が降り立った。灰色の羽根に紫と緑の艶を帯びたその鳥は、やけに人間を見透かすような眼差しで、じっとこちらを見ていた。鳩は、片足をかしげながら首を小さく振る。まるで「見ろ」と言わんばかりに。...
【ウラシリ】怪談

夜明けに濡れる女神像

古い商店街の入口に立つ女神像は、誰も水をかけていないのに、決まって夜明け前だけ濡れていたそうです。濡れているのは胸元から下、まるで誰かに抱き締められた跡のように輪郭を残して……。ある巡回員が深夜に通りかかったとき、水音と一緒に低い笑い声を聞...
【ウラシリ】怪談

点滅する交差点の影

住宅街の街灯が夜通し点滅を繰り返していたそうです。信号も同じように瞬き、赤と青が途切れ途切れに照らしては消えました……。ふと、信号が赤に変わる瞬間、交差点の真ん中に立つ人影が見えたといいます。次に点いた時には、もう歩道に移っていたそうです。...
写真怪談

斜路(しゃろ)の壁

都心の繁華街の片隅に、緩やかな坂道が一本ある。観光客は通らず、地元の人も足早に通り過ぎるだけ。その坂の途中、ある建物の外壁が数年前から不気味な模様で覆われていると噂になっていた。それは、黒地に青と白の抽象画。雲のようなもの、花のようなもの、...
写真怪談

影を連れてくる看板

夜の住宅街の角に、それは立てかけられていました。木製の、笑顔を貼り付けた子供の形。路地の暗がりに溶けるような塗装で、目だけが白く抜けています。近くに住む人は言います。あの看板、昼間は必ず少し傾いているのに、日が暮れると真っ直ぐこちらを向くの...