異界

ウラシリ怪談

昼休止に並ぶ人たち

昼の一時間だけ閉めるはずの窓口に…見えない列だけが並び続けるようになったそうです…
写真怪談

止まらないエスカレーター

その駅のエスカレーターには、奇妙な特徴がある。乗れば必ず下に降りていくはずなのに、いつまでも地上階にたどり着かない、という。初めて体験したのは、会社帰りの夜だった。疲れていたせいか、足が勝手にそのエスカレーターに吸い寄せられるように乗ってしまった。動き出した段階では確かに「下へ向かっている」と思った。だが、数段降りても景色は変わらない。壁の色も、横にある注意書きも、ずっと同じ場所にあるように見えるのだ。何度か手すりから降りようと身を傾けても、足元は止まることなく階段を滑り続ける。体は確かに動いているのに、空間の方が変化を拒んでいるようだった。恐怖というより、ただ時間の感覚がなくなる不思議さに包まれていた。どれほど経ったのか分からない。ふと気づくと、自分は改札口の前に立っていた。後から思えば、「降りた」という記憶は一切ない。ただ、いつの間にか移動が終わっていたのだ。以来、その駅を使うたびに、あのエスカレーターの前で立ち止まってしまう。次に乗ったら、今度は戻ってこれないのではないか――そんな予感に縛られながら。...
写真怪談

浴衣の五人

駅前の夏祭りの帰り道。人ごみから少し外れた歩道で、五人の女性が並んで立っていた。全員が浴衣姿で、後ろを向いている。髪をまとめ、帯を締め、誰一人としてこちらを振り返らない。最初は気にせず通り過ぎようとした。でも、近づくにつれ、何かがおかしいと気づいた。まず、五人とも、まったく同じ靴を履いていた。次に、帯の結び方までが全員一緒。浴衣の柄だけが違う。それでも祭りの格好としては珍しくない。だが──立ち止まったとき、自分の足元が急に濡れた。雨なんて降ってない。しゃがんでみると、彼女たちの下、歩道の隙間から濁った水がしみ出していた。しかもそれが、真ん中の女の足元だけから流れていた。その時、五人のうち一人が、ゆっくりと手を上げて、髪を直す仕草をした。……髪を直す指が、七本あった。一瞬で背筋が凍った。動けなかった。でも次の瞬間、隣の友人に肩を叩かれ、振り向いたら──五人はもういなかった。そこには乾いた歩道と、柵の向こうに灯りだけが残っていた。この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。