エスカレーター

写真怪談

ひとつ上の段にいる

交差するエスカレーターには、“ひとつ上”へ引き上げられる影がある――その場所を通るたび、誰かが少しずつ減っていく。
写真怪談

止まらないエスカレーター

その駅のエスカレーターには、奇妙な特徴がある。乗れば必ず下に降りていくはずなのに、いつまでも地上階にたどり着かない、という。初めて体験したのは、会社帰りの夜だった。疲れていたせいか、足が勝手にそのエスカレーターに吸い寄せられるように乗ってしまった。動き出した段階では確かに「下へ向かっている」と思った。だが、数段降りても景色は変わらない。壁の色も、横にある注意書きも、ずっと同じ場所にあるように見えるのだ。何度か手すりから降りようと身を傾けても、足元は止まることなく階段を滑り続ける。体は確かに動いているのに、空間の方が変化を拒んでいるようだった。恐怖というより、ただ時間の感覚がなくなる不思議さに包まれていた。どれほど経ったのか分からない。ふと気づくと、自分は改札口の前に立っていた。後から思えば、「降りた」という記憶は一切ない。ただ、いつの間にか移動が終わっていたのだ。以来、その駅を使うたびに、あのエスカレーターの前で立ち止まってしまう。次に乗ったら、今度は戻ってこれないのではないか――そんな予感に縛られながら。...