そのバイク駐輪場は、昼間でもどこか薄暗く感じられた。
緑色のカウルが目に刺さるようなスポーツバイクは、他のどの車体よりも新しく、艶やかだった。
だが近づくと、風防ガラスに微かな曇りがあり、そこに映り込むはずの周囲の景色が、ほんの少しずれていた。
覗き込むと、反射の中で歩く人々の顔がすべて見知らぬものになっている。
しかも彼らは、こちらをじっと見返していた。
次の瞬間、耳元でエンジンのアイドリング音が響き、バイクは誰も乗っていないのにゆっくりと動き出す。
緑の機影は駐輪場を抜け、舗道へ、そしてどこかへ消えていった。
その行き先を追った者は、例外なく二度と戻らなかったという。
この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。
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