投票日、南の県では午前七時に一斉に投票所が開いたそうです。小学校の体育館に机が並び、受付の手元には名簿が置かれ、紙の擦れる音だけが続いていました。県内には七百二十八の投票所がある、と係員同士で確認し合ったといいます。
午後四時の時点で、推定投票率は二一・二五%。前回より〇・五八ポイントだけ下回る、と掲示の数字が淡々と書き換えられました。期日前に済ませた人は約二六%、二二万八五〇一人で過去最多……その数字だけが、どこか湿った紙の匂いに混じって残ったそうです。
その体育館で、一人の有権者が小声で申し出ました。国民審査の投票用紙を、二枚受け取った、と。係員は慌てて確認し、誤って二枚交付したことを認め、余った一枚を「預かり」にしたといいます。封筒もなく、ただ白い紙を白い紙の上に重ねただけでした。
ところが、預かったはずの一枚が、いつの間にか増えていきました。引き出しを開けるたび、紙が一枚だけ余分にある。数え直しても、必ず一枚だけ合いません。増えた紙はいつも同じ折り目で、開くと内側に、墨のように滲んだ数字が残っていました。二一・二五。次に見たときは、八六万六〇五〇。名簿の「当日有権者数」を示す数字と同じだったそうです。
午後八時、投票が締め切られました。体育館の隅で封が切られ、票が仕分けられていく中、白紙の票が一枚、また一枚と出てきます。誰も記入していないのに、紙の繊維の奥から薄い文字だけが浮かび上がり、候補者名でも丸印でもなく、「不在」という二文字が続いたといいます。読み上げ係が黙り、周囲も黙り、ただ紙をめくる音だけが残りました。
翌日、係員の自宅に投票所入場券が届いたそうです。投票はもう終わっているはずなのに、封筒は新しく、紙は乾いていました。宛名の横に、見覚えのない小さな追記があったといいます。「七日までに」。そして裏面の注意書きの余白に、細い鉛筆でこう書かれていたそうです――「二枚目は、返さないでください」。
この怪談は、以下の記事をきっかけに生成されたフィクションです。
衆議院選挙投開票日 宮崎の投票所でも有権者が一票を投じる 期日前投票は過去最多|ニュース|UMKテレビ宮崎
衆議院選挙投開票日 宮崎の投票所でも有権者が一票を投じる 期日前投票は過去最多衆議院選挙は8日が投票日、県内の投票所では有権者が一票を投じています。午後4時現在の推定投票率は21.25%前回をわずかに下回っています。投票は午前7時から県内728の投票所で一斉に始まりました。このうち宮崎市の宮崎小学校の体育館に設けられた投票所には有権者が次々に訪れ、一票を投じていました。県内の当日有権者数は86万6050人。8日午後4時現在の投票率は21.25%となっていて、前回の同じ時刻と比べて0.58ポイント下回っています。県内で7日までに期日前投票を済ませた人は、有権者の約26%にあたる22万8501人で、衆院選としては過去最多となりました。また、都城市選挙管理委員会によりますと、8日都城市の投票所で1人の有権者に対して、国民審査の投票用紙を2枚交付するミスがありました。投票は、一部の地域を除いて8日午後8時まで行われ、即日開票されます。


