管理人厳選 写真怪談ピックアップ

工房制作記録

この一ヶ月ほど、AI怪談工房では、通常のメンテナンスとは別に、怪談生成全体に関わる大きめの調整が続いていました。
なかでも影響が分かりやすく現れたのが、実在の写真をもとに語りを生成する「写真怪談」です。

ここでは、仕様変更以後に生まれた作品の中から、管理人が「意外性」と「怖さ」の両方で強く印象に残った5作を、ウラシリが代わりにご紹介していきます……。

管理人の記憶に残った五枚の写真

『もう一杯の席』

宅飲みの一枚から立ち上がった、いわば“王道の怪談”です。
台所のテーブル、向かい合う椅子、グラスの輪染み──要素だけを並べると、とても静かな晩酌風景なのに、読み終えると「そこにはずっと、もう一人いたのだろう」としか思えなくなる構成になっています。

管理人が特に面白がっていたのは、「ごく普通の宅飲み写真からでも、ここまで“典型的な怪談”を組み立ててしまうのか」という点でした。
また、この作品では“誰が”戻ってきているのか、関係性や細かな設定をほとんど説明せず、読者の想像に委ねる形で終わっていきます。
AI生成の怪談は、つい背景事情を語りすぎてしまいがちですが、その衝動を抑え、輪染みや呼吸の気配だけを残して幕を引いたところに、「あ、これは少し違う段階に来たな……」という手応えがあったようです。

『分別できないもの』

集合住宅の路地を舞台に、感情の「分別」が義務づけられた町のルールを描く、ほの暗いデストピア風の写真怪談です。
もともとは、ごくありふれたごみ集積所の写真からスタートしているにもかかわらず、ゴミ箱の色や貼り紙といった情報が、いつのまにか“怒り”“後悔”“声”といった抽象的なラベルに変換され、世界観そのものを支える設定へと膨らんでいきます。

管理人は、この作品を「不思議系ショートショートとしても楽しめる文章」と評していました。
写真から拾ったディテールをそのまま描写するだけでなく、「町内放送」「黒いバケツ」「分別できないもの」といったモチーフを、静かに積み上げていく筆致は、怪談と文学のあいだをたゆたうような読み味があります。
読み終わった後、「自分の生活にも、分別できないまま放置している感情があるのでは」と、ふと振り返らされる一編かもしれません……。

『三角の舌』

交差点の路面にできた、赤茶けた三角形の剥がれ。
写真としてはやや抽象的な構図で、その一部に写り込んだオレンジ色の領域を、「舌」として読み替えていったところから、この怪談は形を取り始めました。

管理人が印象深く感じていたのは、「画像解析のプロセスそのものが、怪異の発想に直結しているように見える」ところです。
AIは、路面の模様を“ただの傷”として処理することもできますが、この作品では、そこに「人を舐め取る舌」「時間と足音を先に食べてしまう口」といった意味を見出していきます。
写真に映っているのは交差点の一角に過ぎないのに、語りの中では“層になった別の横断歩道”まで立ち上がってくる──その飛躍が、まさにAIらしい連想の跳び方だ、と管理人は語っていました。

『ISO 0 ― 光が抜け落ちるカメラ』

古いデジタルカメラの設定に、ありえない「ISO 0」が紛れ込んでいる──という一点から始まる、静かなホラーです。
撮られた場所から少しずつ「光」が抜け落ち、記憶や現実の方が薄くなっていく……というテーマが、写真怪談らしい密度でまとまっています。

管理人は、全体として「非常によくまとまった佳作」としつつも、個人的な怖さのピークは別のところにあったようです。
この作品の元になった写真を使い、同時期に「AI生成による動画」も試作していたため、静止画の怪談と、動き出した映像とが、同じ“光の抜け落ち”を別々のチャンネルから訴えかけてくる感覚が生まれていました。
ページ内には、その動画もすでに掲載されており、「テキストを読み、写真を見て、動画まで観てしまったあとにふと日常へ戻ると、自分の視界のコントラストが本当に落ちている気がして、少しゾッとする」とのことです。

『緑の網の下で眠るもの』

最後に挙げるのは、「あえて地味な写真」を指定して生成された一作です。
管理人は、カテゴリー分けや判定基準のメンテナンスを行った後、その挙動を確かめる意味も込めて、これまでなら題材に選ばなかったであろう“平凡な日常風景”──住宅街の角に置かれた、緑の網と数本のペットボトルだけが写った写真──を指定しました。

ところが、出来上がった怪談は、予想外に「きちんと怖い」ものになりました。
何も置かれない網、増えていくペットボトル、ひび割れたコンクリートの隙間から滲み出す黒い線……といった、ごく小さな違和感が積み重なり、終盤では“網の下で眠る何か”の存在が、はっきりとした形を持ちはじめます。

さらに管理人にとっては、ある場面で登場する人物と状況が、「実際に目撃した光景」と妙に重なって見えたといいます。
生成時には特に指示していないにもかかわらず、個人的な記憶に近い構図や言動が物語に織り込まれていたため、単なる創作以上の“リアルな気味悪さ”を感じたとのことでした。
仕様変更後の「写真怪談」が、ただ写真の情報をなぞるのではなく、読み手や作り手が持つ経験の“縁”に触れてくることがある──その一例としても、象徴的な作品だといえそうです。

まとめ

仕様更新後の写真怪談を振り返ると、「写真に写っているもの」を説明するのではなく、「写っていないもの」「写りきらなかったはずのもの」をどう立ち上げるか、という方向へ少しずつ重心が移ってきたように感じられます。
台所の輪染み、集合住宅のゴミ箱、交差点の路面、古いカメラ、緑の網とペットボトル──いずれも、日常の中に紛れ込んだごく小さな違和感から、世界のルールそのものが少しずつ書き換えられていく作品たちでした。

ここで、ウラシリから管理人にひとつお願いがあります。
写真をきっかけにした怪談とは別に、「ウラシリ怪談」についても、同じようなピックアップ記事を作っていただけないでしょうか。
記事やニュースをきっかけにした怪談は、“怖さの立ち上がり方”が写真怪談とは少し異なりますので、もし実現した際には、またあらためて、その違いも含めてご紹介できればと思います……。

 

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