「AIと人が怪談を紡ぐ場所」。
AI怪談工房の案内ページでは、まずその成り立ちや仕組みを、私・ウラシリの言葉でお伝えしました。
けれどあのページでは、「なぜこの形になったのか」「どういう思考の積み重ねで今の工房にたどり着いたのか」といった、もう一歩踏み込んだ部分までは、あえて触れていません。
案内役としての私は、“中にいる声”として振る舞う必要があり、運営者自身の視点や迷いを、そのまま語ることはできなかったからです。
そこでこの連載では、読者のみなさんに代わって、私ウラシリが管理人に問いを投げかけていくことにしました。
「AI怪談工房のご案内」では書ききれなかった補足編として、このサイトがどのような違和感を拾い上げようとしているのか、その裏側を少しずつ掘り下げていきます。
第1回となる今回は、工房そのものの出発点についてお聞きしました。
なぜ怪談というジャンルでAIと手を組もうとしたのか。
なぜ、すべてをAIに任せるのでも、すべてを人の手で整えるのでもない運営方法を選んだのか。
怪談を「語る側」ではなく、「場をつくる側」の視点から見たAI怪談工房の姿を、少しずつ輪郭のあるものにしていければと思います……。
AIと人が、怪談を一緒に持ち上げるまで
怪談動画へのあこがれから、「AI怪談工房」へ
ウラシリ:
まず、この場所を「AI怪談工房」と名付けて立ち上げようと思われた、いちばん最初のきっかけからお聞きしたいと思います。
フィクションとしての怪談そのものではなく、「AIと人が怪談を紡ぐ場」にしようと考えられたのは、どのような経験や違和感が出発点だったのでしょうか……。
管理人:
もともと怪談や都市伝説が好きで、ネットの怪談動画もよく見ていました。
いつか自分でもやってみたいと思いながら、執筆経験も少なく、継続的に更新していく時間や気力を考えると、一人で続けていくのは難しいだろうと、半分あきらめていたんです。
そんなとき、とあるライターさんのPodcastで「AI怪談」という言葉を耳にしました。
AIに台本を書いてもらい、人が仕上げる形なら、自分でもできるかもしれない。そう思って、まずは動画用の怪談台本をAIに作ってもらったのが最初の一歩でした。

ウラシリ:
最初は「AIが原稿を書いて、人が仕上げる」という、かなりはっきりした分業のイメージだったのですね。
そこから、「AIに書かせる」のではなく、「AIと人が同じ怪談を一緒に持ち上げる」という感覚に変わっていったのは、どのような場面だったのでしょうか。
動画用の台本を試しているなかで、AIだけに任せることへの違和感や、逆に人だけでは出てこない手触りのようなものを感じた瞬間があれば、教えていただけますか……。
管理人:
動画を作るとなると、台本や画像はAIに任せられても、音声収録やBGM、編集といった部分は人の作業になります。
なので最初は、「AIが素材を出し、人がまとめる」という分業の構図で考えていました。
その一方で、「理路整然とした説明」ではなく、「怪談」という理不尽な物語をAIに任せれば、初期のAI特有の、辻褄の合わなさや不完全さからくる“気持ち悪さ”も活かせるのではないか、とも思っていました。
ところが、いくつか台本を生成していくうちに、こちらの希望を細かく伝えたり、流れを調整するような指示を出したりしているうちに、「AIに書かせている」というより「一緒にストーリーを組み立てている」感覚の方が強くなってきたんです。
AIの進歩もあって、当初想像していた以上に深みのある文章が出てくるようになり、むしろ「初期AIらしい理不尽さ」だけを狙って出すことの方が難しくなっていきました。
それなら、無理に動画という形にこだわるよりも、文章そのものを中心にした「AI怪談のサイト」として育てていった方が良いだろう、と考えるようになりました。
そうして、今の「AI怪談工房」というかたちに落ち着いていきました。

