古い商店街に、新しい掲示板が設置されたそうです。
行事案内や落とし物、地域の告知などが貼られ、町の人々は気軽に利用していたといいます。
最初は、子どもの演奏会の案内や回覧板の写しなど、見慣れた張り紙ばかりだったそうです。
けれどある晩、通りかかった住民が、掲示板の裏側から“紙をめくるような音”を聞いたといいます……振り返った時、誰もいない通りに、ただ一枚の紙がひらりと揺れていたそうです。
翌朝、掲示板の隅に、小さな紙片がひとつ貼られていました。
そこには鉛筆で「待っている」とだけ書かれていたといいます。
裏返すとただの紙屑で、糊も画鋲の痕もなく、どうやって貼られていたのか分からなかったそうです。
それ以降、掲示板には夜ごとに短い文字が現れるようになったといいます。
「ありがとう」「また来るよ」──どれも当たり障りのない言葉ですが、朝には必ず消えていたそうです。
貼った者を見た人はいないのに、紙は増え、夜風に揺れては消えたといいます……。
ある住民が深夜に掲示板を見張っていると、背後から“カサリ”という音がして、振り返った時、掲示板の裏から一枚の紙片が舞い出て、暗闇へと消えていったそうです。
それ以来、住民たちは掲示板を使う時、無意識に“裏側”を見ることを避けるようになったといいます。
掲示板は本来、町をつなぐためのものだったはずですが……今はただ、誰かの言葉を呼び寄せる器になってしまったのかもしれません。
この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。
上野毛商店街の掲示板設置|上野毛商店街
上野毛商店街の掲示板設置上野毛駅前に上野毛商店街の掲示板が設置されました。商店街マップと共にホームページにリンクされるQRコードも掲示されています。お買い物、観光にお役立てください。