途切れぬ非常階段

写真怪談

女子大の裏にある非常階段は、夜になると時折「おかしな音」を立てるという。
カン、カン、と靴の踵のような音が金属を叩く。だが見上げても誰もいない。

ある学生が、深夜に研究室から戻る途中、その階段を見上げて凍りついた。
最上段に立つ人影が、上の階へと上がっていく。だが、その建物は三階建てで、そこに「上の階」など存在しない。
それでも影は、鉄柵の先にあるはずのない段を、踏みしめるように昇り続けていた。

恐怖に駆られた学生は逃げ出したが、数日後、彼女は行方不明になった。残されたスマホには、最後に撮影した写真が残っていた。
それは暗闇の非常階段を写した一枚。
ただしその画像には、階段の上方に「もう一つの階層」が写り込んでおり、そこに背を向けて昇っていく女の姿が鮮明に残されていた。

以来、非常階段の踊り場から夜空を見上げると、時折、存在しない「四階」「五階」へと続く階段が闇に浮かび上がるのだという。
そこに足を踏み入れてしまった者は、二度と地上に戻らない。まるで、この世とあの世を繋ぐ階段のように。

この怪談は、実際の写真から着想を得て構成されたフィクションです。

 

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