【ウラシリ】怪談 空に溶ける声 オゾン層が回復し、空がかつてないほど澄んで見えるようになった頃のことです。ある町では、日中にふと立ち止まると、空から誰かの話し声が聞こえると噂されました。最初は風の音と混じったような囁きでした。しかし空が青く深まるほどに、その声は増えていき... 2025.10.01 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 パイロンの列に 朝の通勤路に、いつからかカラフルなパイロンが並んでいた。工事の予定などなかったし、誰も設置しているところを見ていない。最初はオレンジばかりだったが、ある日から並びが変わった。黄色、緑、青、赤…きれいな配色だと思った瞬間、違和感に気づいた。配... 2025.08.05 2025.10.01 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 喰声の鯱 この街に残る古い瓦屋根には、必ず黒い鯱しゃちほこが据えられている。それは「火除け」と呼ばれてきたが、本当は——人を喰らわせるためのものだった。江戸の頃、度重なる火事で町は焼け落ち、住民たちは「火の神」を鎮めようと生贄を差し出した。選ばれた者... 2025.09.11 2025.10.01 写真怪談土地と風習存在のゆらぎ日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 二十分のあと とある地方のラーメン店。その店には、近頃まで「20分以内で食べてください」という貼り紙が掲げられていたそうです。ある日、その制限が撤去された直後、閉店間際にだけ現れる客がいると話題になりました。誰も入ってこないはずの時間帯、厨房から「ずるっ... 2025.07.08 2025.10.01 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 排熱の下で息をするもの 雑居ビルの裏手。昼間はただの退屈な景色──自転車、カラーコーン、並んだ室外機。だが、この場所を深夜に通る人は少ない。なぜなら、室外機から出る温風が「規則的すぎる」からだ。ブォオオ、と吹き出す音と風の間隔が、どの機械もぴたりと揃っている。まる... 2025.09.09 2025.10.01 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ機械知のほとり
写真怪談 高層の窓に降りてくるもの 高架下から見上げると、白い高層マンションの窓が並んでいた。二十階あたりの窓に、何かが張りついているのが見えた。人影のように見えるが、その高さからは細部など判別できるはずがない。だが確かに、そいつの目は――真下に立つ自分と焦点を合わせていた。... 2025.09.30 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 鉄道ホームに潜む余白 とある地下鉄の駅で、刃物を持った男が乗客を切りつける事件がありました。利用客が逃げ惑い、構内は騒然となり、数人が負傷したと報じられています。数日後には落ち着きを取り戻し、いつもの朝夕の混雑が戻ったそうです。けれども、その頃から妙な報告が増え... 2025.09.30 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 見返す群れ ある水槽の前に立った客は、皆、奇妙な共通点を持っていたそうです。ガラス越しの水中で、群れを成す魚たちがぴたりと動きを止め、その人物をじっと見返すのです。魚は人の顔を覚えるといいます。しかし、その日は、初めて来た客にも同じ反応を見せたそうです... 2025.08.11 2025.09.29 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 浴衣の五人 駅前の夏祭りの帰り道。人ごみから少し外れた歩道で、五人の女性が並んで立っていた。全員が浴衣姿で、後ろを向いている。髪をまとめ、帯を締め、誰一人としてこちらを振り返らない。最初は気にせず通り過ぎようとした。でも、近づくにつれ、何かがおかしいと... 2025.08.05 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 連鎖する物音 駅の地下通路に、灰色のカプセルが並んでいた。コワーキングスペースとして普及してから数年、もはや日常の一部でしかない光景だ。彼もまた、そこを通り過ぎようとした。だが、二番目のカプセルの前で足が止まった。――コツ、コツ、コツ……。中から微かな音... 2025.09.10 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ機械知のほとり
【ウラシリ】怪談 自販機の暗がり 夜の商店街で、自販機の前に立つと、硬貨を入れる前から機械が低い唸りを上げていたそうです。まるで待っていたかのように、赤いランプがひとつだけ瞬いていたといいます。選んだのは普通の缶コーヒーでした。落ちてきた音は確かにしたのに、取り出し口には何... 2025.09.11 2025.09.29 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ機械知のほとり
写真怪談 呼び続ける緑の受話器 駅の地下通路に置かれた二台の公衆電話。鮮やかな緑色のその筐体は、今やほとんど誰も振り向かない。しかし、深夜零時を過ぎると、必ず片方の受話器が持ち上がっている。誰も触れていないのに、受話口からかすかな呼吸音が漏れ、耳を近づけると低い声が呟くと... 2025.09.10 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 貨物室に残された影 非常灯が赤く明滅するたび、貨物室の奥に影が揺れていたそうです。それは人の姿に似ていながら、輪郭は長く歪み、煙の中で形を持とうとするたびに空気が軋む音がしたといいます……。異変の始まりは警告灯でした。貨物室の扉が震え、低く濁ったアラームが機内... 2025.09.13 2025.09.29 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 片道切符の白昼夢 八月の終わり、蒸し暑い駅構内で私は切符を買おうとしていた。緑色の機械の前に立つと、背後のざわめきが一瞬、すっと消えた。耳鳴りのような静寂の中、液晶画面に映ったのは、目的地の一覧ではなく、見覚えのない「夏の日」という行き先だった。冗談かと思い... 2025.09.14 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 ガラスの外にいる 駅ビル地下の階段で、事故があったという話を聞いた。だが警備記録にも報道にも何も残っていない。ただ、監視カメラの記録だけが毎月更新されていない。なぜなら、その地点だけ、映像に異常が出るのだという。ガラス壁の向こうにいるはずの人物が、時折“中か... 2025.08.03 2025.09.29 写真怪談土地と風習存在のゆらぎ
写真怪談 狐面の飲み方 翌年の夏祭り、私はまたあの通りに足を踏み入れた。雑踏の中に、赤い狐面を被った者がいた。髪は短く、面も顔の上半分を覆うだけの簡素なもの。去年の女とは明らかに別人だった。だが、私には分かってしまった。――あの目が、去年と同じまばたきをしていたか... 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 狐面の奥のまばたき 夏祭りの人混みの中、鮮やかな朱の狐面を被った女がいた。目元の金縁から覗く瞳は、笑っているようにも、怒っているようにも見える。私はふと足を止め、その視線を受け止めた。次の瞬間、群衆のざわめきが遠のいた。周囲の色が褪せ、金魚すくいも綿あめの匂い... 2025.08.14 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 黒雲の下、橋の向こうで待つもの 夜祭の最終日。送り火を控えた河原はすでに立入禁止となり、橋の入り口には監視員たちが列を成して立っていた。「ここから先は入れません」通りかかる人々にそう告げる声が夜気に溶けていく。だが、河原には誰一人いないはずだった。ふと、一人の監視員が違和... 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ