写真怪談 階段の番号 帰宅はいつも深夜だった。残業のあとコンビニに寄り、アパートの階段を上がる。何も特別なことはない。ただ、二週間ほど前から、違和感があった。階段を上りながら、ふと数えてしまう。一段、二段、三段……。いつのまにか、階段の数が変わっている気がするの... 2025.10.18 写真怪談日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 五時の残り香 とある町で、夕方の放送が一時間早まったそうです。子どもの下校を促すため、五時に短いメロディが流れるようになったといいます。広場のスピーカーは整備され、試験放送も滞りなく終わったと記録されています……。その日から、町の夕方は少しだけ濃くなった... 2025.10.08 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ機械知のほとり
写真怪談 白い花の辻 昨日の赤い彼岸花を撮った後、ふと「そういえば近所にも咲く場所があった」と思い出した。そこで翌朝、まだ人の気配がない時間にカメラを持ち、緑道へ向かった。緑の中に、珍しい白い彼岸花が群れて咲いていた。赤とはまるで別の存在感で、透き通るように浮か... 2025.10.03 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 午前3時11分発、ゆき先不明 深夜の大都市のバスターミナル、最終便のバスが発車した後の停留所は、ガラス越しの光とエンジンの残響だけが漂っていた。一台のバスが静かに入ってきた。時刻表示は午前3時11分。こんな時間の便など存在しないはずだ。乗降口が開き、中から降りてきたのは... 2025.08.15 2025.10.03 写真怪談存在のゆらぎ時のひずみ記録と痕跡
写真怪談 器の底に沈む影 昼下がり、赤いカウンターに置かれたラーメン。湯気の立ち上るその姿に、私は妙な既視感を覚えた。スープをすくうと、表面に浮かぶ油膜が人影のように揺れる。偶然だと思いながら麺を持ち上げた瞬間、空気がざわりと震えた。麺は口に運んでも減らなかった。何... 2025.09.04 2025.10.01 写真怪談日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 赤い月と逆さに動く国 赤い月が沈んだ翌夜、都の高層ビルに異界の囁きが差し込んだそうです。深夜、総理の辞任が発表されると、国中の時計が一斉に狂い始めたといいます。針はゆっくり逆回転し、時報は歪んだ共振を伴って廊下に響いたそうです。議場の窓ガラスに血のような朱が滲み... 2025.09.08 2025.10.01 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ記録と痕跡
写真怪談 高層の窓に降りてくるもの 高架下から見上げると、白い高層マンションの窓が並んでいた。二十階あたりの窓に、何かが張りついているのが見えた。人影のように見えるが、その高さからは細部など判別できるはずがない。だが確かに、そいつの目は――真下に立つ自分と焦点を合わせていた。... 2025.09.30 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 片道切符の白昼夢 八月の終わり、蒸し暑い駅構内で私は切符を買おうとしていた。緑色の機械の前に立つと、背後のざわめきが一瞬、すっと消えた。耳鳴りのような静寂の中、液晶画面に映ったのは、目的地の一覧ではなく、見覚えのない「夏の日」という行き先だった。冗談かと思い... 2025.09.14 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 白い閃光の後、ずれた時刻 とある火山の監視カメラが白い光に包まれた夜、住民の証言は奇妙に食い違っています。ある女性は、光の直後に壁時計が三分進んでいたと話します。だが隣家の老人は「同じ瞬間に時計が五分戻っていた」と証言しました。二人は同じ時刻に同じ空を見ていたはずな... 2025.09.13 2025.09.29 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 波が来なかった日 津波警報が鳴ったという夜、どこにも水は来なかったそうです。けれどその翌日から、全国で奇妙な“痕跡”が報告されはじめました。ある海沿いのビジネスホテルでは、朝になって最上階の廊下全体に、うっすらと白い粉のような粒が広がっていたそうです。はじめ... 2025.07.31 2025.09.17 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ時のひずみ記録と痕跡
写真怪談 止まらないエスカレーター その駅のエスカレーターには、奇妙な特徴がある。乗れば必ず下に降りていくはずなのに、いつまでも地上階にたどり着かない、という。初めて体験したのは、会社帰りの夜だった。疲れていたせいか、足が勝手にそのエスカレーターに吸い寄せられるように乗ってし... 2025.09.11 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 両替機の裏口 深夜の駅構内、人気のないロッカー横に一台の両替機が佇んでいた。旅先で小銭を必要とした青年は、迷わず千円札を差し込む。機械は規則正しく唸り、硬貨が落ちるはずの口から──何も出てこなかった。不審に思いながらも覗き込むと、空洞の奥にもう一枚の札が... 2025.09.12 2025.09.17 写真怪談日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 夏を終わらせない街 高層マンションのベランダから街を見下ろしていた。真夏の青空、建物の屋根に照りつける陽光。眩しいはずの光景なのに、なぜか視線が離せなかった。そこに広がっている街並みは、確かに自分が暮らしてきた場所だった。だが、あるはずのスーパーの看板がない。... 2025.09.14 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 写真の家族 交番に届けられた財布の中には、数千円と古びた写真が一枚入っていたそうです。写真には、小さな子どもと若い母親が笑って写っていたといいます。署員は持ち主を探すため、写真を机に置いて確認していたそうですが、翌朝にはその子どもの顔が、ほんの少しだけ... 2025.09.16 2025.09.17 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 まだ夏なのに 夏の陽射しに照らされた店先に、除雪機と新しいストーブが並んでいたそうです。冬を急ぐように、そこだけ季節がずれているかのように見えたといいます。夜になると、閉じたシャッターの奥から微かな響きがしたそうです……金属が息を漏らすような音でした。誰... 2025.08.21 2025.09.09 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 100億年に1秒の影 もしかすると、聞かなかったほうがよかった話かもしれません。ある研究施設で、世界最高精度の時計が開発されました。 その誤差は「100億年に1秒」。光格子時計と呼ばれるその装置は、時間の流れを極限まで正確に測定できるといいます。地震予測や津波観... 2025.06.06 2025.09.08 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 逆回転の瞬間 交差点に立つスマートフォン用充電スタンドに、同じ顔をした通行人が交互に現れると報告されたことが記録されています。見る者によれば、彼女は少しずつこちらに近づき、同じ言い回しを連続して口にする…一度聞いた後、振り返ると、やはりスタンド脇にいる。... 2025.07.25 2025.09.08 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 写された街 写真を一枚だけ送ってきた知人がいました。景色は平凡で、地方の国道沿いにあるどこにでもある商業地のようでした。しかし、数日後、その知人が行方不明になったそうです。彼の位置を探るため、画像解析に長けた人物が、その写真をAIにかけました。すると、... 2025.07.28 2025.09.08 【ウラシリ】怪談土地と風習時のひずみ機械知のほとり