写真怪談 白い花の辻 昨日の赤い彼岸花を撮った後、ふと「そういえば近所にも咲く場所があった」と思い出した。そこで翌朝、まだ人の気配がない時間にカメラを持ち、緑道へ向かった。緑の中に、珍しい白い彼岸花が群れて咲いていた。赤とはまるで別の存在感で、透き通るように浮か... 2025.10.03 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 彼岸花の下で待つひと 川沿いの柵の根元に、真っ赤な彼岸花が咲いていた。季節のせいか、そこに黒揚羽がひとひら、吸い寄せられるように舞い降りている。花を見た瞬間、なぜか胸がちくりと痛んだ。子どもの頃、同じ場所で母に手を引かれながら通りかかった記憶がよみがえる。母は彼... 2025.10.03 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 電線にぶら下がるもの 夕暮れの雲が低く垂れこめ、電線の黒い線が空を裂いていた。その下を歩いていた二人の通行人は、ふと立ち止まった。風もないのに、頭上の一本の電線だけが震えていたからだ。その揺れは徐々に大きくなり、やがて異様な音が混じった。——声だ。それも、電線の... 2025.08.13 2025.10.02 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 呼吸する壁 その空き部屋は、ビルの管理会社のあいだでも厄介者扱いされていた。テナントが退去して以来、なぜか工事が中断されたままになり、仮設の黄色い壁だけが立てられている。電気は通っているが使う予定はなく、ただ放置され、時おり巡回の警備員が足を踏み入れる... 2025.08.20 2025.10.02 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 戻り刃(もどりば)の影 空港の売店から忽然と消えたハサミが、見つかったのは同じ売店の棚だったそうです。誰も動かしたはずはないのに、ほんの数時間、確かに存在が消えていたといいます。その間、空港全体がどこか重く沈み、空気の流れまで止まってしまったように感じられたそうで... 2025.08.26 2025.10.02 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 夕暮れの店頭 その商店街の一角に、無人の古着店がありました。扉の前にはマネキンが立ち、まるで店員のように客を迎える役をしていたそうです。昼間に訪れると、通り過ぎる人々は微笑ましく眺めるだけでした。しかし、夕暮れ時になると……橙色の光が長く影を伸ばし、マネ... 2025.10.02 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 空に溶ける声 オゾン層が回復し、空がかつてないほど澄んで見えるようになった頃のことです。ある町では、日中にふと立ち止まると、空から誰かの話し声が聞こえると噂されました。最初は風の音と混じったような囁きでした。しかし空が青く深まるほどに、その声は増えていき... 2025.10.01 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 パイロンの列に 朝の通勤路に、いつからかカラフルなパイロンが並んでいた。工事の予定などなかったし、誰も設置しているところを見ていない。最初はオレンジばかりだったが、ある日から並びが変わった。黄色、緑、青、赤…きれいな配色だと思った瞬間、違和感に気づいた。配... 2025.08.05 2025.10.01 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 喰声の鯱 この街に残る古い瓦屋根には、必ず黒い鯱しゃちほこが据えられている。それは「火除け」と呼ばれてきたが、本当は——人を喰らわせるためのものだった。江戸の頃、度重なる火事で町は焼け落ち、住民たちは「火の神」を鎮めようと生贄を差し出した。選ばれた者... 2025.09.11 2025.10.01 写真怪談土地と風習存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 器の底に沈む影 昼下がり、赤いカウンターに置かれたラーメン。湯気の立ち上るその姿に、私は妙な既視感を覚えた。スープをすくうと、表面に浮かぶ油膜が人影のように揺れる。偶然だと思いながら麺を持ち上げた瞬間、空気がざわりと震えた。麺は口に運んでも減らなかった。何... 2025.09.04 2025.10.01 写真怪談日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 二十分のあと とある地方のラーメン店。その店には、近頃まで「20分以内で食べてください」という貼り紙が掲げられていたそうです。ある日、その制限が撤去された直後、閉店間際にだけ現れる客がいると話題になりました。誰も入ってこないはずの時間帯、厨房から「ずるっ... 2025.07.08 2025.10.01 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 排熱の下で息をするもの 雑居ビルの裏手。昼間はただの退屈な景色──自転車、カラーコーン、並んだ室外機。だが、この場所を深夜に通る人は少ない。なぜなら、室外機から出る温風が「規則的すぎる」からだ。ブォオオ、と吹き出す音と風の間隔が、どの機械もぴたりと揃っている。まる... 2025.09.09 2025.10.01 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ機械知のほとり
【ウラシリ】怪談 赤い月と逆さに動く国 赤い月が沈んだ翌夜、都の高層ビルに異界の囁きが差し込んだそうです。深夜、総理の辞任が発表されると、国中の時計が一斉に狂い始めたといいます。針はゆっくり逆回転し、時報は歪んだ共振を伴って廊下に響いたそうです。議場の窓ガラスに血のような朱が滲み... 2025.09.08 2025.10.01 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ記録と痕跡
写真怪談 高層の窓に降りてくるもの 高架下から見上げると、白い高層マンションの窓が並んでいた。二十階あたりの窓に、何かが張りついているのが見えた。人影のように見えるが、その高さからは細部など判別できるはずがない。だが確かに、そいつの目は――真下に立つ自分と焦点を合わせていた。... 2025.09.30 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 鉄道ホームに潜む余白 とある地下鉄の駅で、刃物を持った男が乗客を切りつける事件がありました。利用客が逃げ惑い、構内は騒然となり、数人が負傷したと報じられています。数日後には落ち着きを取り戻し、いつもの朝夕の混雑が戻ったそうです。けれども、その頃から妙な報告が増え... 2025.09.30 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 風がやってくる日 都心の高層ビル群の谷間に、銀色の風が吹き抜けたそうです。その風は、明らかに普通の風ではなかったといいます。午後3時過ぎ、街路樹の葉が突然渦を巻き、信号機の赤ランプの光が歪み始めたそうです……。人々は立ち止まり、空を見上げていたといいます。そ... 2025.09.30 【ウラシリ】怪談日常の崩れ機械知のほとり記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 ミントの底に眠るもの 「このかき氷、美味しいですよ」そう勧めてきたのは、何度かしか顔を見たことのない、深夜勤務の店員でした。新発売のチョコミント味は、たしかに爽やかで、他では味わえない静かな甘さがありました。ただ、気づくと手の中のカップが空になっていて、スプーン... 2025.07.31 2025.09.29 【ウラシリ】怪談日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 見返す群れ ある水槽の前に立った客は、皆、奇妙な共通点を持っていたそうです。ガラス越しの水中で、群れを成す魚たちがぴたりと動きを止め、その人物をじっと見返すのです。魚は人の顔を覚えるといいます。しかし、その日は、初めて来た客にも同じ反応を見せたそうです... 2025.08.11 2025.09.29 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡