晩酌怪談 縄暖簾(なわのれん)の五番目 仕事帰り、同僚に呼ばれて店の前まで来た。赤と青の提灯がぬるい風に鳴り、ガラス戸の内側ではビールケースを積んだベンチに人が詰めて座っている。私は入り口の縄暖簾を撮ってから、手で割って中へ入った。縄は指先に冷たく、雨でもないのにじっとり濡れてい... 2025.10.19 写真怪談土地と風習日常の崩れ晩酌怪談
晩酌怪談 イカ刺しと“おやじ生き” カウンターの木の艶が、古い血のように光っている。仕事帰りのホッピー、冷えたグラスに小さな泡が弾けた。皿の上には、透き通るようなイカ刺し。すだちの香りが、まるで潮風のように鼻をくすぐる。壁のメニューに目をやる。「アボカドスライス」「エシャレッ... 2025.10.10 2025.10.13 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ晩酌怪談
晩酌怪談 ボトルの底から聞こえる声 夜更けのバーは、いつも静かだった。客が一人、また一人と帰っていき、最後に残るのは俺と棚に並ぶ無数のボトルたちだけになる。氷の音が溶けて消える頃、決まって聞こえるのだ。――カラン。まるで誰かがグラスを置いたような小さな音。その夜も同じように棚... 2025.10.10 写真怪談日常の崩れ晩酌怪談記録と痕跡
写真怪談 器の底に沈む影 昼下がり、赤いカウンターに置かれたラーメン。湯気の立ち上るその姿に、私は妙な既視感を覚えた。スープをすくうと、表面に浮かぶ油膜が人影のように揺れる。偶然だと思いながら麺を持ち上げた瞬間、空気がざわりと震えた。麺は口に運んでも減らなかった。何... 2025.09.04 2025.10.01 写真怪談日常の崩れ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 二十分のあと とある地方のラーメン店。その店には、近頃まで「20分以内で食べてください」という貼り紙が掲げられていたそうです。ある日、その制限が撤去された直後、閉店間際にだけ現れる客がいると話題になりました。誰も入ってこないはずの時間帯、厨房から「ずるっ... 2025.07.08 2025.10.01 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 灰色席の影 「純喫茶・灰色の窓」は、街角の古びた通りにぽつりと建っていたそうです。日中でも薄暗く、窓には薄いカーテンと埃じみたすりガラスがかかっていたといいます。その店では、常連客でもその日最初に入る者には「灰色席」だけが案内されるそうです。灰色席とは... 2025.09.25 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
晩酌怪談 赤提灯の下で笑う影 夜の繁華街を歩いていると、赤提灯の列が異様に目を引いた。その灯りは温かくも見えるが、どこか血のように濃く、近づくほどに胸がざわつく。ある居酒屋の前、提灯の影に妙なものが映っていた。通り過ぎる人々の姿ではない。痩せた腕のような影が、提灯から伸... 2025.09.18 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ晩酌怪談
【ウラシリ】怪談 厨房の写真 ある日、投稿サイトに一枚の写真が掲載されたそうです。都内の有名ラーメン店の厨房で、店主が選挙を呼びかけるTシャツを着て、親指を立てて笑っている……という一見なんの変哲もない一枚だったといいます。ただ、その左手には、白く濁った何かを挟んでいる... 2025.07.09 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡