写真怪談 高層の窓に降りてくるもの 高架下から見上げると、白い高層マンションの窓が並んでいた。二十階あたりの窓に、何かが張りついているのが見えた。人影のように見えるが、その高さからは細部など判別できるはずがない。だが確かに、そいつの目は――真下に立つ自分と焦点を合わせていた。慌てて視線を外し、次に見上げたとき、影はもう二十階にはいなかった。代わりに、一階のガラス扉の内側で、まったく同じ姿勢をしてこちらを見ていた。移動した、のではない... 2025.09.30 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 棚に並ぶ記憶 都内のビルの一角、北海道のアンテナショップに入ったときのことだった。ふと目に留まったのは、棚一面に並ぶ袋麺やレトルト食品。そのどれもが、遠い昔を呼び覚ます匂いを放っていた。学生時代、ひとり暮らしを始めてすぐの頃。金もなく、よく食べていたのは、湯切りのお湯をスープにする独特なスタイルの“あのカップ焼きそば”だった。深夜の台所で湯を沸かす音と、アパートの古い壁を伝うような人の気配。そのとき隣室に住んで... 2025.09.21 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
ウラシリ怪談 天井からの足音 夜中、下の階から「足音が響いている」と苦情があったそうです。しかし、当の部屋の住人はひとりきりで、深夜はほとんど動かない生活をしていたといいます。不審に思い、管理会社とともに調査を始めた時のことです。録音機を設置したところ、住人が眠っているはずの時間にだけ、一定のリズムで歩く足音が記録されていたそうです……。しかも、その音は床板の上ではなく、部屋の天井側から鳴っていたといいます。まるで、上下の構造... 2025.09.16 ウラシリ怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
ウラシリ怪談 廊下に残る三本指の跡 管理掲示板に「共用廊下への私物放置はご遠慮ください」と追加の紙が貼られた日から、廊下の隅に置かれた物の向きが、朝だけ少しずつ変わったそうです。折りたたみ椅子は壁に背を向け、傘立ては手すり側へ寄り、空の段ボールは開口部が各戸の表札の方を向いた……そんな具合だったといいます。深夜、見回りに出た清掃員は、床のタイルに水の輪染みが数珠つなぎに残っているのを見たそうです。人の足跡ではなく、プラスチックの脚や... 2025.09.11 ウラシリ怪談日常の崩れ記録と痕跡