集合住宅

写真怪談

階段の番号

帰宅はいつも深夜だった。残業のあとコンビニに寄り、アパートの階段を上がる。何も特別なことはない。ただ、二週間ほど前から、違和感があった。階段を上りながら、ふと数えてしまう。一段、二段、三段……。いつのまにか、階段の数が変わっている気がするの...
写真怪談

階段の上の鳩

夕暮れのアパート。三階建てのその建物は、陽が沈むころになると赤銅色の壁がゆっくりと血のような色に染まっていく。私はその時間が嫌いだった。理由ははっきりしている。二階の廊下の突き当たりに、いつも鳩が一羽、じっと立っているからだ。最初にそれを見...
写真怪談

高層の窓に降りてくるもの

高架下から見上げると、白い高層マンションの窓が並んでいた。二十階あたりの窓に、何かが張りついているのが見えた。人影のように見えるが、その高さからは細部など判別できるはずがない。だが確かに、そいつの目は――真下に立つ自分と焦点を合わせていた。...
写真怪談

棚に並ぶ記憶

都内のビルの一角、北海道のアンテナショップに入ったときのことだった。ふと目に留まったのは、棚一面に並ぶ袋麺やレトルト食品。そのどれもが、遠い昔を呼び覚ます匂いを放っていた。学生時代、ひとり暮らしを始めてすぐの頃。金もなく、よく食べていたのは...
【ウラシリ】怪談

天井からの足音

夜中、下の階から「足音が響いている」と苦情があったそうです。しかし、当の部屋の住人はひとりきりで、深夜はほとんど動かない生活をしていたといいます。不審に思い、管理会社とともに調査を始めた時のことです。録音機を設置したところ、住人が眠っている...
【ウラシリ】怪談

廊下に残る三本指の跡

管理掲示板に「共用廊下への私物放置はご遠慮ください」と追加の紙が貼られた日から、廊下の隅に置かれた物の向きが、朝だけ少しずつ変わったそうです。折りたたみ椅子は壁に背を向け、傘立ては手すり側へ寄り、空の段ボールは開口部が各戸の表札の方を向いた...