写真怪談 風鈴の底に閉じ込められた夏 風鈴は、風が鳴らすものだと思っていた。けれどこの街の骨董市で見つけた風鈴は、違った。透き通る硝子の中には、小さな魚のような形の気泡が浮かんでいる。覗き込むと、その魚がわずかに尾を振っているように見えた。風に揺れると、澄んだ音が響く――しかし... 2025.09.04 2025.10.12 写真怪談土地と風習日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 ミントの底に眠るもの 「このかき氷、美味しいですよ」そう勧めてきたのは、何度かしか顔を見たことのない、深夜勤務の店員でした。新発売のチョコミント味は、たしかに爽やかで、他では味わえない静かな甘さがありました。ただ、気づくと手の中のカップが空になっていて、スプーン... 2025.07.31 2025.09.29 【ウラシリ】怪談日常の崩れ記録と痕跡
写真怪談 片道切符の白昼夢 八月の終わり、蒸し暑い駅構内で私は切符を買おうとしていた。緑色の機械の前に立つと、背後のざわめきが一瞬、すっと消えた。耳鳴りのような静寂の中、液晶画面に映ったのは、目的地の一覧ではなく、見覚えのない「夏の日」という行き先だった。冗談かと思い... 2025.09.14 2025.09.29 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 白昼、風が連れてきた声 真夏の午後、照りつける日差しを避けるように、私は堤防沿いの道を歩いていた。視界の向こうまで続く青空に、白い雲がゆっくりと形を変えながら流れていく。道の脇にはベンチが並び、誰もいないその座席は、まるで見えない誰かが座るのを待っているようだった... 2025.08.15 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 夏を終わらせない街 高層マンションのベランダから街を見下ろしていた。真夏の青空、建物の屋根に照りつける陽光。眩しいはずの光景なのに、なぜか視線が離せなかった。そこに広がっている街並みは、確かに自分が暮らしてきた場所だった。だが、あるはずのスーパーの看板がない。... 2025.09.14 2025.09.17 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ時のひずみ