波が来なかった日

【ウラシリ】怪談

津波警報が鳴ったという夜、どこにも水は来なかったそうです。
けれどその翌日から、全国で奇妙な“痕跡”が報告されはじめました。

ある海沿いのビジネスホテルでは、朝になって最上階の廊下全体に、うっすらと白い粉のような粒が広がっていたそうです。はじめは清掃ミスとされたものの、それが“塩の結晶”であるとわかり、誰も原因に心当たりがありませんでした。
部屋の内壁には、波紋のような乾いた跡が浮かび、廊下の防犯カメラはその時間帯だけ、内部から曇ったように視界が白く濁っていたといいます。

遠く離れた山間の集落では、深夜に全ての時計が同時に止まっていたという証言が複数ありました。翌朝、電子式も機械式も、針はなぜか“警報が鳴った時刻”を指したまま動かず、バッテリーや機構にも異常は見つからなかったそうです。

ある教育機関では、古い気象データを印刷するプリンターが、指定していない日付の潮位図を吐き出しました。その線は不自然なほど滑らかで、いくつかの区間には、見たことのない記号が付されていたといいます。
問題の図は数分後に全体が真っ黒に変色し、保存される前に消失しました。

別の報道機関では、災害資料映像を再生していた際、画面に一瞬だけ“現代型の警察車両”が写り込んだという報告もあります。映像は30年前のはずで、編集履歴にもその瞬間の記録は残っていなかったそうです。

──波は来なかった。けれど、何かが“通った”のかもしれません。
それは、水ではなく「災害という出来事そのもの」で、時や構造を断ち切って、現実の底に擦過痕のような揺らぎを刻んでいった……。

その日から、誰の耳にも“警報の音だけが鳴る”という幻聴が時折残っているそうです。
たとえ何も起きていなくとも。

この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。

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