招待の灯(ともり)

【ウラシリ】怪談

ある女性が、話題になっていた招待制のネットサービスに参加したいと思い、SNSに「招待コードを探しています」と投稿したそうです。招待を譲ってくれる人を待つ、ごくありふれた呼びかけだったといいます。

投稿の数分後、見知らぬアカウントから返信が届いたそうです。

「DMください」

プロフィールには“DM受付中”とあるのに、どこにもDMボタンが見当たらなかったといいます。投稿履歴もほとんどなく、フォローもフォロワーも数えるほどだったそうです。

女性は不安を覚え、その返信を非表示にしたそうです。それで、すべてが終わるはずだったといいます。

けれど、その夜。

スマートフォンが、ひとりでに震えたそうです。通知はなかったといいます。

画面を点けると、液晶の表面に薄い曇りが浮かんでおり、それは指ではなく、唇の跡のようだったそうです。

そのとき、耳の奥でノイズの混じった声が響いたといいます。

「……招待は、もう、届いています」

次の瞬間、画面の奥で橙の光がともり、まるで神社の灯籠のようにゆらめいたそうです。その光の中に、伏し目がちに立つ女の影が見えたといいます。輪郭は、彼女自身によく似ていたとか。

やがて、画面が煤(すす)のようにざらりと揺れ、光も声も、すべて吸い込まれるように消えてしまったそうです。

翌朝、机の上のスマートフォンの下に、黒ずんだ輪のような跡が残っていたといいます。

焦げではなく、覗きこむとその内側はまるでどこかへと続く浅い穴のように見えたそうです。

そこから、ひどく微かな呼吸の音がしたとか。

……その音に応えるように、彼女のスマホが震えたそうです。画面には、昨夜とは違う文が表示されていたといいます。

「招待、受けてくれてありがとう」

その後、彼女のアカウントからの投稿は、一度も更新されていないそうです。

この怪談は、以下のニュース記事をきっかけに生成されたフィクションです。

SNSで「招待コード」を口実にした詐欺・勧誘に注意(トレンドマイクロ セキュリティブログ)

SNS型投資詐欺とは?手口や事例、気をつけるポイントを解説
SNS上で著名人が投資を勧める広告を表示させたり、「必ず儲かる」というようなメッセージを送ったりして偽の投資へ勧誘し、金銭をだまし取る「投資詐欺」が確認されています。 投資勧誘にSNSを利用するため、「SNS型投資詐欺」

▶︎ 画面の向こうに“誰か”がいるように感じたとき、
――この世界の境界を守るための灯を、ひとつだけ置いておきます。

 

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