写真怪談 立入禁止の遷し守(うつしもり) 安全担当だった先輩が教えてくれた。「うちの現場に一本だけ、廃棄できない看板がある。撤去日に必ず“次の工区”へ手配されるやつだ」理由は経費でも再利用でもない。その看板は、貼り出した瞬間から周囲の“境界”を吸い集める。関係者とそれ以外、内と外、... 2025.09.16 写真怪談土地と風習日常の崩れ機械知のほとり
写真怪談 路地裏の声 夜の仕込みを終えた帰り道、店の裏口から路地に出ると、青いゴミ桶が三つ並んでいた。昼間は何の変哲もないはずのそれが、今夜は妙に膨らんでいる。袋越しに透ける中身は、新聞紙や生ごみの他に、布切れのようなものが見えた。足を止めた瞬間、奥のゴミ桶が、... 2025.08.15 2025.09.15 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 赤い月を結ぶ指 その夜、ふと見上げた月は血のように赤く、電線に縫い止められているように見えた。不思議と視線を逸らせず、じっと見続けているうちに気づいた。電線が震えている。風のせいだと思ったが、夜気は凪いでいた。よく見ると、一本の線の結び目に、白く細い指が絡... 2025.09.08 2025.09.15 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
写真怪談 消えた担ぎ手 夏祭りの熱気に包まれた商店街を、神輿が揺れながら進んでいた。肩を寄せ合い、掛け声を響かせる人々。その群れの中に、一人だけ顔の見えない男が混じっていた。背中には「護」の字が染め抜かれた法被。だがその字は他の布より黒く沈んで、まるで墨がまだ乾い... 2025.09.15 写真怪談土地と風習存在のゆらぎ
晩酌怪談 座るはずのない客 ― カウンターの常連 唐揚げをつまみ、ビールを飲み、何気なく撮った一枚。仕事帰りのありふれた光景のはずだった。だが写真を見返すと、卓上に奇妙な「濡れた手の跡」が浮かんでいた。油染みでも水滴でもない。人間の掌の形をした痕が、唐揚げの皿にかぶさるように残っている。気... 2025.09.14 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ晩酌怪談
写真怪談 草に隠れた三番線 夏草に覆われた無人駅。ホームの番号札「3」だけが、今もまっすぐ立っている。だが、この駅に三番線は存在しない。線路は二本しかなく、地図にも三番線の記録はないのだ。夕暮れ時、旅人がその「3」の標識を見上げていると、不意に風景が歪んだ。草がざわめ... 2025.09.05 2025.09.13 写真怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 廊下に残る三本指の跡 管理掲示板に「共用廊下への私物放置はご遠慮ください」と追加の紙が貼られた日から、廊下の隅に置かれた物の向きが、朝だけ少しずつ変わったそうです。折りたたみ椅子は壁に背を向け、傘立ては手すり側へ寄り、空の段ボールは開口部が各戸の表札の方を向いた... 2025.09.11 【ウラシリ】怪談日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 官邸の夜会議 その夜、首相官邸の巡回記録には、執務室の前で足音が二度止まっていると記されています。扉の向こうでは、予定にない会議の声が幾層にも重なり、壁の奥からにじむように響いていたそうです。鍵は掛かっておらず、灯りは消えたまま。警備員がノブを押すと、冷... 2025.09.09 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 記憶再構成アルゴリズム 最近、こんな話を耳にしました。とある企業が、最新のAIモデルを使って映画を制作したそうです。その出来栄えは驚くほどで、まるで人間が監督したかのようだったとか。しかし、その映画には奇妙な点がありました。登場人物たちが、誰かの記憶をなぞるような... 2025.06.06 2025.09.09 【ウラシリ】怪談機械知のほとり記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 まだ夏なのに 夏の陽射しに照らされた店先に、除雪機と新しいストーブが並んでいたそうです。冬を急ぐように、そこだけ季節がずれているかのように見えたといいます。夜になると、閉じたシャッターの奥から微かな響きがしたそうです……金属が息を漏らすような音でした。誰... 2025.08.21 2025.09.09 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ
写真怪談 苔むす隙間から覗くもの 庭の隅に積み上げられた古いブロック。雨に打たれ、苔に覆われ、誰も気にも留めなくなったその塊を、ある夜ふと見てしまった。――苔の奥で、何かが瞬いた。まるで目のように、じっとこちらを窺っていたのだ。翌日、確かめようと近づいてみると、ブロックの隙... 2025.09.09 写真怪談土地と風習存在のゆらぎ日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 記録されなかった声 ある夜、月面探査機が着陸を試みていたそうです。地球との通信は安定し、多くの人々がその瞬間を見守っていたといいます。けれど、着陸予定の数秒前、突如として通信は途絶えました。原因は不明のまま、技術者たちは手がかりすら得られなかったそうです。数時... 2025.06.06 2025.09.08 【ウラシリ】怪談土地と風習存在のゆらぎ
【ウラシリ】怪談 100億年に1秒の影 もしかすると、聞かなかったほうがよかった話かもしれません。ある研究施設で、世界最高精度の時計が開発されました。 その誤差は「100億年に1秒」。光格子時計と呼ばれるその装置は、時間の流れを極限まで正確に測定できるといいます。地震予測や津波観... 2025.06.06 2025.09.08 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ時のひずみ
【ウラシリ】怪談 非解析コード 記録に残すには、少し危うい話かもしれません……ある研究所で、最新のAIインフラが稼働を始めたそうです。その施設は、数千もの高性能GPUを備え、生成AIの研究に特化しているとか。開発者たちは、日々進化するAIの可能性に胸を躍らせていたといいま... 2025.06.07 2025.09.08 【ウラシリ】怪談機械知のほとり記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 記録外アクセス ある地方都市の郊外に、最新鋭のAI研究施設が建てられました。そこでは、生成AIの開発が日夜進められ、研究者たちは膨大なデータを扱っていました。しかし、ある日から、施設内の監視カメラに奇妙な映像が映るようになったのです。深夜、誰もいないはずの... 2025.06.07 2025.09.08 【ウラシリ】怪談機械知のほとり記録と痕跡
【ウラシリ】怪談 森に誘う服 聞いた話ですが、とある古着屋に、奇妙な「再流行」が起きたことがあったそうです。店の片隅にあったのは、10年以上前の「森ガール」スタイルの服。 誰も手に取らなかったその服が、ある時期から突然、若者たちの間で売れ始めたといいます。買っていった客... 2025.06.07 2025.09.08 【ウラシリ】怪談存在のゆらぎ日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 曇る水面の輪郭 佃島の佃煮店では、朝の仕込み中、湯気に包まれた厨房で、父子が無言のまま鍋を撹拌していたそうです。若い職人は、店に入ってからというもの、調理中に“背後で誰かが真似をするような音”を感じるようになったといいます。誰もいないはずの調理場の隅から、... 2025.07.25 2025.09.08 【ウラシリ】怪談日常の崩れ
【ウラシリ】怪談 逆回転の瞬間 交差点に立つスマートフォン用充電スタンドに、同じ顔をした通行人が交互に現れると報告されたことが記録されています。見る者によれば、彼女は少しずつこちらに近づき、同じ言い回しを連続して口にする…一度聞いた後、振り返ると、やはりスタンド脇にいる。... 2025.07.25 2025.09.08 【ウラシリ】怪談日常の崩れ時のひずみ